車載パワーエレクトロニクスの世界

車載機器に利用されているパワーエレクトロニクスの世界をマニアックに説明

変調率を使うな。直流電圧利用率を使用しろ!

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パワエレ業界は、そのエンジニアの周囲環境によって、

言葉の定義が異なることが多いです。

インバータ(特に三相電圧形インバータ)の初学者にとって、

変調率というのは理解しがたいものだと思います。

パワエレ業界に10年以上居ますが、同じ社内、部署の人との会話でも

いまだに当方もこの定義に違いに悩まされることがあります。

 

変調率を定義するにあたって変調方式を考えると、

著名な変調方式は大きく分けて、以下となります。

 ・三角波比較PWM方式

 ・三次高調波重畳方式

 ・空間ベクトル変調

 ・二相変調

 ・過変調制御

 ・1パルス制御

 

変調率の考え方の派閥としては、

三角波比較PWM方式の最大電圧出力時を変調率1と定義する派閥

⇒少数派ですが、一定数の人はこの定義です。

 相電圧基準での変調となるため、変調率1のときの線間電圧は

 0.866(√3/2)となります。

 

②三次高調波重畳方式の最大電圧出力時を変調率1と定義する派閥

⇒多数派だと思います。

 三次高調波重畳方式だけではなく、中性点電位を変動させる変調方式

 である空間ベクトル変調、二相変調も同じ定義になります。

 変調率1のとき、線間電圧が1となります。

 

③直流電圧に対しての出力線間電圧実効値を変調率と定義する派閥

⇒少数派ですが、根強い人気があります。

 当方が推奨する直流電圧利用率と同義です。

 

インバータという機器は、入力の直流電圧をスイッチングして負荷(主にモータ)に

対して電圧を印加することが目的です。

入力の直流電圧をスイッチングするためどんなに頑張っても、

出力線間電圧のピーク値は入力直流電圧の値を超えることは出来ません。

(昇圧しない前提)

 

そのため、出力電圧の議論はピーク値では出来ないため、

実効値で議論する必要があります。

(線間電圧の瞬時的なピークはどの方式でも同一)

 

直流電圧利用率という言葉の定義は、

入力の直流電圧をどれだけ使用できているかという指標です。

 

直流電圧利用率 = (線間電圧実効値:基本波成分)/(入力電圧)

 

どの変調方式も結局のところ、いかに高い出力線間電圧実効値を

出すかに注力しているため、この直流電圧利用率との表現の使用すれば

各変調方式を横並びでみることができる。

 

文字ばっかりになってしまいましたが、そのうち図を入れて

分かりやすい記事となるようにします。

 

まじめに変調率を理解しようとするなら、

以下のページが各方式に対しての説明が丁寧だと思います。

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35225/8/Chapter%207.pdf#search='%E5%A4%89%E8%AA%BF%E7%8E%87+%E7%9B%B8%E9%9B%BB%E5%9C%A7'