車載パワーエレクトロニクスの世界

車載機器に利用されているパワーエレクトロニクスの世界をマニアックに説明

オシロの測定信号は遅延している!

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パワエレエンジニアの必需品のオシロスコープですが、

測定信号は遅延しています。

ここで言及している遅延とは、測定プローブで波形を観測してから

測定プローブを通ってオシロスコープの入力端子まで信号が伝達される時間です。

通常、伝達遅延としてプローブのデータシートに記載されています。

(だいたい、数nsec~100nsec程度の間です。)

  

普段の低圧系で回路動作を測定しているときは、

この遅延による影響を意識することはありません。

(nsecオーダーの遅延を問題視する測定はそれほどないため)

しかし、スイッチング損失測定時には、強く意識する必要があります。

 

スイッチング損失とは、以下のような電流と電圧の掛け算で求められます。

下図からも分かるように電圧と電流の関係性が非常に重要で、

例えば電圧波形が遅延しているV(t)の信号は右側へ移動することになり、

スイッチング損失が変化します。

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オシロスコープによる電源のスイッチング損失測定」

http://jp.tek.com/dl/Power_Appnote_46Z-60010-0_1602.pdf

 

この二つの信号の間の時間差をスキューと呼び、時間差をなくす作業を

デスキューと呼びます。

デスキューのやり方は色々とありますが、

基本的には高周波の信号源から抵抗負荷に電流を通電した際の

電圧と電流を測定して、プローブの遅延を補正します。

以下のページが参考になるかと。

 

スイッチング損失を測定する際には必須のデスキューですが、

デスキューをキチンと出来る環境にない方もいるかと思います。

(設備・予算面の制約、企業風土の制約から)

 

キチンと出来ないからやらないのではなく、

プローブのデータシートに記載されている伝達遅延を設定するなど、

まずは出来ることから始めてみましょう。

 

ちなみにデータシートに記載されていない場合は、

その測定器メーカのカスタマーセンターなどに問い合わせれば、

伝達遅延の標準値は教えてもらえます。

(仮に教えてくれないメーカの場合は、そのメーカの測定器は使用しない方が

良いと思います。っというか、使用するに値しないです。)

 

また、測定器からBNCなどでオシロスコープに信号を入力している場合も

あると思います。

その際は、1mあたり5nsecの遅延を見込んでおけばOKです。

(仮に0.5mのBNCケーブルだったら、2.5nsec)

 

ではでは。