車載パワーエレクトロニクスの世界

車載機器に利用されているパワーエレクトロニクスの世界をマニアックに説明

インバータの出力電圧は正弦波ではない!

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インバータとは

インバータとは直流を交流へ変換する装置である。と頻繁に説明される。

例えばこちら。

別に間違ってはいないが、インバータを学び始めたばかりだと

誤解して理解することが多いのが実情です。

どのように誤解しているかと言うと、

①出力される電圧は、アナログ的な綺麗な交流(正弦波)が出力されると誤解

②電圧、電流の概念がまったくない

となります。

 

インバータの出力線間電圧は、方形波

インバータの動作イメージですが、以下のHPの図1に記載の形で

説明されることが多いです。

【コンバータ(図1 左図)】

入力された交流を直流に変換する。

 

【インバータ(図1 右図)】

入力された直流を交流に変換する。

 

まさしく、図1の右図は、インバータからアナログ的な綺麗な交流(正弦波)が

出力されているように見えます。⇒これが初心者の誤解のもとです。

 

インバータは、入力された直流“電圧”をスイッチング素子を用いて、

負荷側に印加するかしないかのオンオフを制御する装置です。

つまり、オンかオフしか出来ないため、負荷側に印加される電圧は、

「オン時」入力の直流電圧と同じ大きさ

「オフ時」0V

となります。

 

以下のHPの図1の左の方形波となります。

 

電圧と電流の概念の理解は必要

自分が制御したいものが、電流であるか、電圧であるかの区別が

出来ない初心者が非常に多いです。

 

例えば、車両駆動用の車載インバータの場合、以下のイメージで区別します。

 

入力電圧:バッテリ等の電圧のため、制御対象ではない

入力電流:入力電圧、出力電圧出力電流により成り行きで決まる

 

出力電圧:出力電流になるような出力電圧を出力

出力電流:上位ECUからくるトルク指令に応じた電流に制御(制御対象)

 

つまり、「出力側」は電圧、電流も決定されるため、電圧×電流で出力電力が

算出されます。また、「入力側」は電圧が決まっているため、

インバータの内部での電力損失がないと仮定すると

(出力電力)/(入力電圧)

で入力電流が算出できます。

 

何が言いたいかというと、

エネルギー保存の法則より、入力電力と出力電力は等しくなるため、

どんなに頑張っても上記の4つ(入出力電圧、電流)のうち、

3つまでしか制御できないということです。

つまり、残りの1つの物理量は一意に決定されます。

 

ではでは。