車載パワーエレクトロニクスの世界

車載機器に利用されているパワーエレクトロニクスの世界をマニアックに説明

プルアップ抵抗が10kΩの理由

f:id:power_ele:20160314234130j:plain

制御基板上によく使用されるプルアップ抵抗ですが、

だいたいが10kΩが使用されていると思います。

 

回路設計が少しできるようになった初心者が

よく戸惑うポイントは、なぜ10kΩ何だろうってことです。

 

その理由は、「なんとなく!」です。

実際に設計している設計者が言っているのだから、

間違いありません。

 

そもそも、プルアップ抵抗ってなんぞやという方は、

以下をご確認ください。

プルアップ ‐ 通信用語の基礎知識

まじめに考えると

無論、回路定数を選定する訳ですから、10kΩ選定の

もっともらしい理由はつけることができます。

でも最終的にはなんとなくに落ち着くと思います。

 

①ICの誤動作を防止するため(抵抗値が大きい側)

ICの端子電位を固定するためにプルアップ抵抗を設定するのですが、

抵抗値が大きいとノイズによって電流が流れると

抵抗値が大きいためノイズによる 発生電圧も大きくなり、

誤動作する可能性が出てきます。

そのため、極端に大きな値とすることが出来ず、

1k~100kΩ程度の範囲となります。

 

 ②ICの誤動作を防止するため(抵抗値が小さい側)

 ノイズによる発生電圧を小さくするため、抵抗値を小さくし、

プルアップ電流を増加させるときがあります。

この場合、極端に小さくすると電流が増大し、

抵抗での電力消費が問題になってきます。

そのため、極端に小さい値にすることが出来ず、

470~100kΩ程度の範囲となります。

 

無論、詳細設計はもっとまじめに実施するのですが、

大まかに上記の抵抗範囲ぐらいになります。

つまり、10kΩだろうが、9.1kΩだろうが、11kΩだろうが

設計成立します。

この中で10kΩを選定している理由は

 

「なんとなく」

 

です。

 

中には、抵抗の流通数として10kΩが多く流れているから、

コストが安いという人が居るかも知れませんが、

今はE24系列ならどの抵抗値を選んでも同一価格です。

(確かに大昔は抵抗値での価格差がありました。)

 

中には、基板上のほかの回路で使う可能性の高い10kΩとしておけば、

チップ部品をマウントする際のフィーダの数量が1個削減できて、

コスト低減に繋がるという人が居るかも知れません。

今は、フィーダを1個共通化したからといってコストが下がる

状況ではありません。

仮に基板上に10kΩが使われていなくて、9.1kΩが使われている場合、

プルアップを9.1kΩに変更する設計者はほとんど居ないでしょう。

 

そのぐらい、このなんとなく10kΩというのは、

意思が強いのです。

 

ではでは。